空調服を私服として活用するメリットとお手入れについて

空調服は気温が高い場所で着用する作業服ですが、その遮熱性の高さから私服として使うケースが増加しています。近年の気温上昇に伴い、室内での熱中症予防に効果的であると高く評価されたことが私服として普及した理由のひとつです。

快適に過ごすためには空調服の特徴やお手入れ方法を把握する必要があります。暑い時期を乗り切るためにも、空調服の扱い方について学びましょう。

空調服を着ると暑い場所でも気持ち良く過ごせると言われています。空調服には送風用のファンが付いていますが、このファンで外気を取り込み、衣服の中に風を送るのです。しかし、空調服には体を冷やす機能はありません。

あくまでも衣服の中に風を送るだけですが、この風が空気の層を作って外気の熱を遮断するのです。熱中症は体温の急激な上昇で起こるトラブルですが、気温の上昇に伴って体温も上がってしまう点を注意しなければいけません。

人体は暑さを感じると体を冷やそうと発汗しますが、この発汗作用そのものが体温を上げてしまう原因でもあるのです。発汗によって水分が減ってしまい、それによってさらに暑さを感じます。その暑さを解消しようと新たに発汗するという悪循環に陥り、遂には熱中症になってしまうのです。

この悪循環を避けるには暑さを感じない状態にするのが最も効果的です。冷房の冷たい風に当たるのが最適ですが、場所が限られる欠点があります。空調服は体を冷やすのではなく、外気の熱に触れさせないという発想で生まれた衣類です。

体温が上昇するのは気温が高いのが主な原因なので、気温の高さを感じさせなければ体温も上がりません。実際、空調服のファンを作動させた状態で高温の屋外に出ても体温はほとんど上がりません。一般的な夏用の生地が薄い衣類を着るのに比べると、体温の上昇率は非常に低く抑えられているのです。

この点から、空調服は暑気払いに最適な衣類と言っても過言ではありません。

外気の熱を遮断することで暑さを感じさせない空調服は冷房設備を置くことができない場所での作業に最適な作業服として、肉体労働の現場では古くから活用されていました。一般に普及しなかったのは冷房を簡単に使用できる環境であり、わざわざ空調服を使うメリットが無かったためです。

しかし近年になって、冷房の風で体を冷やし過ぎることで生じる体調不良が問題視されるようになりました。また、冷房を使うことによる電力の過剰消費や、室外機から排出される熱風で局地的な気温の上昇が生じるなど、様々な問題が明るみになっています。

そのため、冷房に頼らずに涼しく感じるための方法として空調服が注目されるようになったのです。元々は作業服の一種である空調服は一般的な部屋着とは異なり、おしゃれなデザインとは言い難いのが実状です。機能性を第一に考えた作りなので面白みの無い、地味な衣類と言えます。

しかしその地味な作りこそが機能美を上手く表現していると高く評価されているのも事実です。ファンを動かしている間は空気の層が作られることで外気の影響を受けず、暑さを感じることはほぼありません。体を冷やしているわけではないので、少しでも肌寒さを感じたらファンを止めることで即座に外気の熱を感じることができます。

任意のタイミングで調節できる利便性の高さから部屋着をはじめとする私服全般に転用することが可能です。熱中症は日差しを直接浴びることが無い室内でも起こるトラブルなので、空調服を部屋着として扱うのは理に適っている行為なのです。

熱中症の原因である体温の急激な上昇を防ぐのに最適な空調服ですが、あくまでも作業服の一種であることを忘れてはいけません。また、空調服はファンの風を逃がさないように、気密性が高い生地で作られています。気密性の高さは伸縮性の乏しさでもあるので、空調服は体を激しく動かす環境には不向きな衣類なのです。

そのため、キャンプなどのアウトドアやスポーツの際に着用する場合は体が動かしやすいように、サイズ調整を慎重に行う必要があります。また、気密性が高い生地は熱を外に逃がさないことも意味するので、送風用のファンを止めるとたちまち体温が籠ってしまい、急激に暑さを感じるので注意しなければいけません。

アウトドア用の空調服を選ぶ際はサイズもさることながら、生地の強度にも気を配ることが重要になります。空調服の生地が破れるとそこから風が漏れてしまい、遮熱性が保たれません。屋外での着用は引っかけによる生地の破れが起きやすいので、その点を踏まえて最適な一着を選ぶ必要があるのです。

部屋着として用いる場合は生地の強度よりも着心地を重視します。いくら遮熱性が高くても着心地が良くなければ快適なひと時は過ごせません。表記サイズと実寸の違い、肩幅や胴回りの太さなど、自分の体に適した作りであることをよく確認することが快適に着こなす条件なのです。

空調服が汚れた場合、送風機器を取り外せば家庭用の洗濯機で洗うことは可能です。しかし、空調服の多くは気密性を向上させるために極細の化学繊維を編んだ生地で作られています。化学繊維は高温や摩擦に弱いので、洗濯はできても乾燥機にはかけられません。

風通しの良い所で陰干しをするのが、生地の縮みや型崩れを避ける洗い方です。送風機器の汚れは軽く湿らせたタオルで撫でるように拭き取ります。ファンのモーターや電池の端子が水に濡れるとショートして故障するためです。

また、送風機器は消耗品でもあるので、長く使い続けて風の勢いが弱くなったり電池の充電回数が増えたら新品と交換する必要があります。

空調服のデザインは機能性を第一にしたものなので、そこにはカジュアルウエアのようなおしゃれな感覚はありません。しかし、アクセサリーなどを組み合わせることで。実用一辺倒な作りの空調服でもおしゃれな私服としての雰囲気を持たせることができます。

帽子を被ったり胸元に見えるインナーの色合いを工夫するなど、空調服の機能を保ちながらおしゃれな雰囲気を演出するのがコツです。ファッションの良し悪しは個人のセンスに左右されるので絶対的な正解はありません。しかし、外気の熱を通さないことで涼しさを感じられる空調服の良さを損なわずに外観の雰囲気を変えるのが最適な方法なのは曲げられない事実なのです。